MINIのことをイチから知りたい方のために歴史をまとめてみました
1959年にイギリスで誕生したミニは世界中で愛され、深刻な経営危機の時代も日本では変わらぬ支持を集めていました。ミニがBMW傘下になった今も21世紀のBMW MINIだけではなく、20世紀のローバーミニ(クラシック・ミニ)も愛され続けています。そこでこの記事では50年を超えるミニの歴史を紐解き、1959年からミニがどのような進化を遂げてきたのかを簡単に紹介します。
1959年から530万台を販売したローバーミニの歴史
BMW MINIのルーツは1959年まで遡ることができます。イギリスの自動車会社、BMC(British Motor Corporation)が第二次中東戦争によるガソリン価格高騰への対策として開発したのがミニでした。初代のミニは「オースチン・セブン」、「モーリス・ミニ・マイナー」という名称で販売されています。当時のBMCは傘下にオースチンとモーリスという2つの自動車ブランドを所有しており、それぞれのディーラー網で販売されたので2種類のミニがあったのです。
初代ミニを開発したのはアレック・イシゴニスというギリシャ生まれのエンジニアで、ミニ開発の功績が認められ、後にイギリス王室からナイトの称号が送られています。彼が開発したミニは、2000年に販売が終了するまでの約40年間で530万台もの販売実績を記録しました。
レース界でミニの名を広めたジョン・クーパー
1959年の発売開始から2000年まで、ミニは当初の基本設計をそのままに販売されていました。欧州の狭い道でも扱いやすい、コンパクトで高燃費な車として開発されたミニでしたが、後にゴーカートフィーリングと呼ばれる軽快なハンドリングからレース界で注目を集めるようになります。
現在でもミニのことを「ミニ・クーパー」と呼ぶ人が多くいますが、「クーパー」の名はミニをレース界で一躍有名にさせたジョン・クーパーの名にちなんでいます。クーパーの名を冠して開発された「ミニ・クーパー」は1960年代のモンテカルロラリーで連続優勝を遂げ、その逸話は今もミニの歴史を語る際には欠かせません。
ビートルズをはじめ、セレブに愛されたミニ
コンパクト、軽量、高性能なミニでしたが、革新的な車だったため、なかなか一般に認められず販売に苦労した時期があります。ミニが飛躍するきっかけになったのは有名人に愛されたことでした。ビートルズメンバーをはじめデヴィッド・ボウイ、エリック・クラプトンなどのミュージシャンや、ファッション界ではポール・スミスなどのデザイナーから一流モデル、イギリス王室ではエリザベス女王までもがミニを愛していたことで知られています。
また、ミニはメディアでも度々取り上げられました。TVや映画に数えきれないほど登場し、「ミニミニ大作戦」(1969年製作、2003年にリメイク版も製作)のようなミニが重要な役割を果たす映画まで制作されています。
日本人が愛し、支えたローバー・ミニ
世界各地で愛され、特に日本で根強い人気を誇ったミニでしたが、ビジネス的には順風満帆ではありませんでした。70年代にはミニを生産していたBLMC(旧BMCに別の自動車ブランドを吸収した企業)は低迷に陥り、70年代末から90年代初頭にかけてはホンダとの提携などで生き残りを図ります。80年代にミニはBLMCから分社したローバー社のブランドとなり、ここから20世紀のミニは「ローバー・ミニ」と呼ばれています(これ以前のクラシック・ミニも一括りでローバーミニと呼ぶ人もいます)。
70年代~90年代にかけてのミニは世界的に不振を極めていましたが、80年代から日本で始まったミニブームによってミニはなんとか生き長らえます。今でも圧倒的な人気を誇るミニのグレード「クーパー」は90年代に日本市場がローバー社にかけあって復活させ、ミニ・クーパーは世界中で販売されるようになります。
ミニ人気は90年代に入り徐々に復活したものの、ローバー社の他の自動車ブランドは不振を極めていました。そのため、ローバー社は1994年からBMWの傘下となり、2000年にBMWはミニだけを残し、他のブランドは売却してしまいます。2001年に発売開始となったミニ(これまでのブランドと差別化するためにBMW MINIと呼ばれています)の開発は90年代から進められていました。従来のデザインを踏襲しつつBMWの技術が投入され、信頼度が大きく上がったBMW MINIは時間をかけ徐々に世界での人気を取り戻していきます。日本国内では2002年3月2日にBMW MINIが販売開始となりました。
ローバーがBMW傘下となったのは1994年から
BMW傘下になる前はホンダと提携していたローバー社
ローバーがBMW傘下となったのは1994年のこと。実はローバーやローバーの前身のBL(ブリティッシュ・レイランド社。前述のBMCとは同じ会社だと思ってください)は1979年からホンダと提携を結んでいました。BMWがローバーを傘下に収めたため、ホンダとの提携は解消されましたが、もしホンダが引き続きローバーと提携関係を続けていたらミニの歴史はどうなったのでしょう。
BMWがローバーを傘下に収めた後、ローバーを企業として存続させながら車の品質向上や経営改善に取り組んでいましたが、イギリスは労働組合が非常に強く、伝統あるブランドが国外企業の傘下に入ったことへの反発もあり、BMWによるローバーの経営は上手くいっていませんでした。ローバーへの投資が大きすぎ、一時はBMW自体の業績が不安視された時期もあったほどです。
1997年に発表されたACV30がBMW MINIのデザインのルーツ
ローバーの経営に苦慮していたものの、今のBMW MINIに繋がる新モデルの開発をBMWは続けました。クラシックミニのままでは年々厳しくなる環境規制や安全基準に対応するのは難しく、新しいミニの開発がなければMiniブランドは存続できない状況でした。そして、1997年にはBMWブランドでのACV30(上の写真)、ローバーブランドでのSPIRITUALの2つのコンセプトモデルがジュネーブショーで発表されます。
ACV30は今のBMW MINIに繋がるデザインですが、少しずんぐりとし過ぎで、このまま販売されなくて良かった…と心から思います。もう1台のSPIRITUALについてはMiniの名を受け継ぐモデルとはとても言えず、エンジンレイアウトもRR(リアエンジン、リアドライブ)とFFの伝統も受け継がれていません。いろいろな意見があると思いますが、Miniブランドの魅力は迷走していたローバー社の経営陣より、BMWの方が客観的に見て理解していたように思えます。最終的にBMWはローバーの再建は諦め、ミニなど一部ブランドのみをBMWで受け継ぎ、SUV部門(今のランドローバー)は売却されました。
2001年、BMW MINIブランドでの再スタート
第1世代ミニ登場時にデザインの軸は定まっていた
2001年にBMWは現在のBMW MINIとしての第1世代モデルの販売をスタートさせました。当初はミニ3ドアハッチバック(R50、R53)のみの販売で、2004年にミニコンバーチブルが投入されます。クラシックミニファンからのローバー時代とのデザインやボディサイズの違いで批判などはありましたが、新しいモノが批判されるのは長い伝統を持つブランドでは仕方がないことです。今では第1世代のミニのデザインは非常に秀逸だったと評価されています。
第3世代の現行モデルになっても、第1世代から大きくデザインが変わっていないことからもBMW MINIとしてのデザイン軸は初代モデルですでに定まっていたことがわかります。多少の批判を受けようと、一度決めたデザイン軸がブレずに守られ続けるのはBMWらしい点だといえるでしょう。BMWでも伝統のキドニーグリルのデザインにこだわり続けるなど、必要以上にデザイントレンドに振り回されない会社ですからね。
BMW MINIがラインナップを増やし始めたのは第2世代ミニから
2007年にミニは第2世代(R56)へとフルモデルチェンジ、第1世代とボディサイズはほぼ同じで、基本デザインも微変更に留めつつ、エンジンなど信頼性は大きく向上しました。ちなみに、第2世代ミニからミニのラインナップは本格的に増えはじめ、2007年にミニクラブマン(R55)、2010年にミニクーペ(R58)、2011年にミニクロスオーバー(R60)とミニペースマン(R61)、2012年にミニロードスター(R59)とラインナップが大幅に拡大されました。本格的にMINIブランドが羽ばたいたのは第2世代からと言えるでしょう。
そして2014年には第3世代のミニ3ドア(F56)が登場。同年にミニ5ドア(F55)も発表され、翌年には第3世代ミニクラブマン(F54)、2016年には第3世代ミニコンバーチブル(F57)が登場、2017年には2代目ミニクロスオーバー(F60)も販売開始となました。
2024年には第5世代のミニが登場しはじめます。最初にミニクロスオーバーの後継モデル、新型ミニカントリーマン(U25)が発表、続いてミニエースマン(J05)、ミニ3ドア(F66、J01)、ミニ5ドア(F65)とニューモデルラッシュとなりました。