今も昔も愛されるクラシックミニ(ローバーミニ)
クラシックミニは新しいものでも2000年に販売されたモデルとなり、古いモデルでは50年以上前の車両も販売されています。最近ではイギリス本国やヨーロッパだけでなく、台湾や香港、マレーシアなどでもクラシックミニ熱が高まっていますが、クラッシックミニの保有台数が一番多い、ここ日本では今でもたくさんの色とりどりのクラシックミニが走っています。
そんな日本でも販売終了から20年以上が過ぎ、コンディションのいい車両が徐々に少なくなってきました。本来、80年代以前のクラシックミニには燃料噴射で行うキャブレターモデルもありますが、販売台数が少なく、良いコンディションの車両を見つけるのが難しくなっています。そのため、この記事で紹介するのは燃料噴射がコンピューター制御になった1992年以降のモデル(1.3iと表記されるモデル)に絞って紹介します。
クラシックミニ(ローバーミニ)とは?
簡単にクラシックミニの紹介から
クラシックミニについてあまりご存知ない方もいらっしゃるでしょうから、簡単に仕様の変遷についてお話しましょう。ミニの歴史の詳細については別記事で紹介しているので、下記リンクからご覧ください。
1959年に誕生したミニは850㏄のモデルからスタートし、道路環境が良くなるにつれ徐々に排気量やパワーを拡大、1000㏄、1300㏄と進化してきました。今回紹介するミニは1992年以降のモデルになりますが、1992年以前に販売されていた1000㏄と1300㏄のモデルはエンジンの燃料供給をキャブレターという機械で行っていました。その中でも1300㏄のキャブレターモデルは通称キャブクーパーと呼ばれ、一部のマニアの間で人気を博しました。
一方、1992年以降のミニはECUというコンピューターを使って、エンジンへの燃料供給および点火時期の制御を行うように進化しました。燃料をコンピューター制御でエンジン内部に噴射(インジェクション)することからインジェクション車と呼ばれており、モデル名称の「1.3i」の“i”はインジェクションの略称です。1992年以降の1.3iは92~93年、94年~96年、そして97年以降でインジェクションシステムが改良されています。
オススメのクラシックミニは最後のモデルチェンジを受けた1997年以降のモデル
クラシックミニは1997年に大きなモデルチェンジを受けました。主な改善点は下記になります。
- 安全対策のため、運転席にエアバッグ、運転席と助手席にシートベルトプリテンショナーを採用。
- 後部座席への乗り降り改善のため、運転席助手席ともにワンアクションシートバック前方可倒式を採用。
- ヒューズボックスを室内に、またエンジンルーム内には30Aヒューズが4個納まるメインヒューズボックスを設置。
- ハロゲンヘッドライトを採用し、ライトスイッチもウインカーディマースイッチと一体化。
- 間欠ワイパーの採用。
- ヒーターブロアーの風量をHIGHとLOWの2種類に設定。
- 左フロントフェンダーの伸縮式ラジオアンテナをルーフアンテナに変更。
- フロントフラッシャーをクリアーレンズに変更。
以下、海外仕様での変更点です。
- 海外仕様ではインジェクター(燃料噴射を行う装置)にマルチポイントインジェクション(通称MPI。一般的には4つある気筒それぞれにインジェクターを配し、効率的な燃料噴射を行う仕組みだが、ミニの場合は4つの気筒を1番2番、3番4番と2つのグループに分けインジェクターを2個配した)を採用したが、日本向けモデルは従来通りのシングルポイントのまま。MPIが国内モデルに採用されたのは2000年モデルから。
- 海外仕様ではラジエーター位置がサイドから冷却効果の高いフロント部分に変更されたが、国内モデルはクーラーコンプレッサーの取り付け位置などの問題があり、フロントラジエーターは採用されず。
細かなところまで書いてみましたが、よほどマニアな方でない限りは年ごとの仕様変更について知る必要はないでしょう。「1997年を境に安全性と信頼性が上がった」程度の認識で問題ありません。
今も昔も変わらない、ミニのクラシックなデザイン
ミニの魅力の1つが1959年から変わらないクラシックなデザインです。実際には年代によって少しずつデザインが変わっていたり、80年代にはホイールサイズが長らく続いた10インチから12インチに変わったりしているのですが、伝統的なデザインを大きく変えずに2000年まで販売されていたのは驚くべきことだと言えるでしょう。
車に限らず、ほぼすべての工業製品は時代の流行のデザインを取り入れ、変化していくのが普通ですが、時代におもねり過ぎたデザインは短い期間で賞味期限が切れてしまいます。1960年代に確立されたデザインを守り続けてきたことが、今もミニが多くの人から評価される理由になっているのでしょう。
コンパクトなボディサイズが魅力
また、サイズのコンパクトさもミニが愛される理由の1つです。下の表にBMW MINIの各世代との数値比較を載せていますが、圧倒的なサイズの違いがおわかりいただけるでしょう。試しにミニ以外の他メーカーの軽自動車のページを開いて数字を比較してみてください。
ボディサイズ以外でも、ホイールベースや重量などすべての数値でミニの方が小さいことがわかるでしょう。最高出力や最大トルクの数値を見ると非力な車に見えますが、重量がこれだけ軽い車だとカタログ数値から想像する以上によく走ります。力強い車だとはさすがに言えませんが、一般的な街中での走行や高速道路の法定速度+αでの巡航には何の問題もありません。
ローバーミニ クーパー1.3i | 第1世代 MINI | 第2世代 MINI | 第3世代 MINI | |
---|---|---|---|---|
4速MT (4速AT) | 5速MT | 6速MT | 6速MT | |
全長(mm) | 3,075 | 3,650 | 3,740 | 3,835 |
全幅(mm) | 1,440 | 1,690 | 1,685 | 1,725 |
全高(mm) | 1,330 | 1,445 | 1,430 | 1,415 |
ホイールベース(mm) | 2,035 | 2,465 | 2,465 | 2,495 |
重量(kg) | 710 (730) | 1,140 | 1,170 | 1,170 |
排気量(cc) | 1,271 | 1,598 | 1,598 | 1,498 |
最高出力(ps) | 62ps ( 53ps ) | 116ps | 122ps | 136ps |
最大トルク | 94Nm ( 91Nm ) | 149Nm | 160Nm | 220Nm |
タイヤ | 145/ 70SR12 | 175/ 65R15 | 175/ 65R15 | 175/ 65R15 |
燃費 | — | 13.4km/L | 18.8km/L | 19.2km/L |
* 数値はすべてミニクーパーのもの。
クラシックミニ(ローバーミニ)購入ガイド
クラシックミニは乗り手を選ぶ?
クラシックミニは特別な車好きが乗るイメージかもしれませんが、実際にはそれほど車に詳しくないオーナーも多いです。初めての車がクラシックミニ、という方もいますし、女性のオーナーさんもいて、年齢層もさまざまです。「たまたま気に入った車が古いクラシックミニだった」と言うような動機でクラシックミニを購入する方も多いので、古い車だからと必要以上に不安を感じる必要はありません。
クラシックミニの整備はミニのプロに任せましょう
「クラシックミニはトラブルが多く、車に詳しい人じゃないと乗れない」そういうイメージを持っている方も多いでしょう。実際、新しいモノでも20年以上前の車両なので、トラブルが無いとは言いません。できる限り故障しないようにコンディションのいい高年式の車両を販売していても、故障してしまうこともあります。
ただ、そういった際も信頼できるミニ専門店とお付き合いしていれば、オーナーが自分でメンテナンスや修理をする必要はありません。日々、ミニに乗る中でエンジンなどからの異音やオイル漏れなどに早めに気付き、信頼できるお店に相談すれば充分です。
ミニの世界にはオーナーご自身でメンテナンスをやられる方もいて、しっかりした知識を持った方もいますが、プロのメカニックは修正やメンテナンスの際にトラブルが起こりがちな他の部分のチェックも行っていますので、一般のオーナーさんは専門店に整備を任せるのをオススメします。
部品供給にあまり不安はありません
販売終了から20年以上経つクラシックミニですが、部品供給は思ったより安定しています。主要な部品については日本国内でストックしている問屋さんがありますし、供給が無くなった部品や当時の純正品の問題点を改良した対策部品もあります。滅多に出ない部品に関しては海外に発注となることもありますが、部品が手に入らないことはありません。
クラシックミニの中古車のほとんどが90年代のモデル
販売されているミニの中古車の8割方が1992年以降の1300㏄のインジェクションモデル(1.3i)で、さらにその半数以上が1997年のモデルチェンジ以降のモデルとなっています。AT車とMT車の割合は6:4くらいでしょうか。機構がシンプルで、運転も面白いということでMT車人気も高いのですが、最近はAT限定免許の方も多いのでAT車も人気が出てきています。クラシックミニはMT車のイメージが強いかもしれませんが、1960年代にはすでにAT車がラインナップされていました。
グレードは2つだが
また、90年代のミニはメイフェアとクーパーの2つのグレードに分けることができます(90年代後期に登場したケンジントンはメイフェアのインテリアの豪華版、AT限定のグレード)。この2つのグレードをベースにいろいろな特別仕様車が出てくるのですが…すべてを説明できないほど、いろいろな特別仕様車がありました。
メイフェアの上位モデルがクーパーなのですが1.3iではエンジン仕様は同じで、エクステリアやインテリアの仕様の違いでグレードが分かれています。中古車の場合、メイフェアでも内装も外装もカスタムされて豪華になっていることもあり、新車当時の区別が通用しないこともありますね。そのため、メイフェアとクーパーの区別は気にせず、コンディションやデザインの好みで車両を選んでもいいでしょう。
クラシックミニ(ローバーミニ)のカスタムの自由度はBMW MINI以上
クラシックミニはBMW MINI以上にさまざまなカスタムパーツが販売されています。見た目の印象を変えるため塗装を塗り替えることも珍しくありません。そのため、中古車購入時に好みのボディカラーに塗り替えて納車、なども珍しくありません。
数多く生産されたミニの中には13インチホイールを履かせたBSCCリミテッドやスポーツパックなどの特別仕様車だってありますし、社外ホイールにもいろいろなデザインのモノが販売されていました。ミラーやボディストライプ、ルーフカラーやダッシュボード、ハンドルのデザインまで思い通りにカスタムが可能です。
そのため、中古車でも最初からある程度カスタムされている車両もあります。エンジンチューニングや大きくモディファイされたミニは車両バランスを崩している場合が多くリスクがありますが、ライトなカスタムパーツが装着された中古のクラシックミニは好みに合うのであれば、お得かもしれません。
クラシックミニ(ローバーミニ)購入後の注意点
オイル交換と冷却水交換のサイクルを守りましょう
次にミニを調子よく乗っていくためのポイントについてお話しましょう。まず、一番大事なのはオイル管理です。現行のミニはロングライフオイルを使用しており25,000~30,000㎞ごとのオイル交換サイクルですが、クラシックミニでは3000㎞ごと、もしくは半年ごとにオイルを交換してください。
クラシックミニは1つのオイルがエンジンとミッションの両方を潤滑する仕組みになっており、汚れたオイルはエンジンとミッションにダメージを与えてしまいまいます。そのため、交換サイクルをきちんと守ることがトラブル防止につながるのです。特にAT車はミッションの機構が複雑で、オイルの果たす役割が重要です。AT車のミッショントラブルはオイル交換サイクルを守ることと、丁寧なシフトチェンジを心掛けるだけでかなり軽減できますよ。
また、コンディションが悪くなっているミニで、必ずと言っていいほど共通しているのが冷却水の汚れです。オイルは定期的に交換されているのに、何故か冷却水交換が置き去りにされているのです。運転中のエンジンは発熱しますので、ある程度一定温度に保つ必要があり、その冷媒が冷却水なのです。
冷却水には不凍、防錆、消泡などの役割もあり、使用していくと劣化してそれらの効力が落ちていきます。冷却水の交換を怠ると、エンジン水路内の腐食を抑えられずに錆が冷却水と共に循環し、ラジエター類を詰まらせたりゴムホースの劣化を招き、冷却効率の低下や冷却水漏れを起こし、結果オーバーヒートというエンジンにとても深刻なダメージを与える原因につながります。エンジンオイル同様冷却水の定期的な交換が重要で、交換サイクルは3~4年ごとが目安になります。
クラシックミニはエンジンをかけてすぐに走り出さないこと
AT車でもMT車でもエンジンをかけてすぐに走り出さないようにしてください。始動してすぐはオイルがエンジンやミッションの各部に回っていませんし、機械自体が適温になっていないため、各部品間のクリアランスが適正値になっておらず、エンジンやミッション内部の摩耗を早めてしまいます。特に冬は丁寧に暖気運転をするように気をつけてください。オイルが温まっていない状態で走行するのはエンジンにもミッションにもよくありません。
クラシックミニ(ローバーミニ)購入後に定期的に点検、交換が必要なパーツ
エンジンをボディと固定するステディロッド
クラシックミニでは定期的に交換が必要な部品がいくつかあります。1つ目はエンジンをボディに固定しているステディロッドです。ステディロッドにはエンジンから発生する振動をボディに伝えないよう、ゴム製のブッシュが組み込まれています。
純正部品のステディロッドブッシュは改良されてから長持ちするようになり、それまでよりトラブルはグッと減りましたが、それでもある程度の距離を走るとブッシュが劣化し、交換の必要が出てきます。交換サイクルは乗り方などによって違いますが、エンジン上部を前後に揺すった時の具合や、走行中のアクセルON-OFFでの衝撃などで確認できますので、オイル交換の度にチェックしてもらうようにしましょう。
なお、MT車は2本、AT車は1本のステディロッドでエンジンを固定するようになっており、ブッシュが劣化してくるとAT車はエンジンが前後に動くようになり、そのまま放置しておくと排気漏れを起こしたり、配線が切れたり、エンジンに取り付けられている各種パーツやボディ自体にも悪影響が出てきたりします。
サスペンションの役割を果たすラバーコーン
もう1点、距離を走ると必ず交換する必要があるのはラバーコーンというゴム製品です。ほとんどの車には路面からの衝撃を吸収するサスペンション(バネのような部品)が取り付けられています。クラシックミニで同じ役割を果たすのがラバーコーンで、コンパクトに車を設計するためにミニでは場所を取るスプリング式のサスペンションではなく、弾力のあるゴムをサスペンションとして採用したのです。ラバーコーンは非常によくできた独創的なサスペンションなのですが、ゴムが徐々にヘタっていく欠点があります。そのため、定期的なラバーコーンの交換が理想的です。
また、ラバーコーンがヘタってくると少しずつ車高が下がってきます。車高が下がってくると乗り心地が悪くなり、走行性能に影響が出てきますし、段差を越える際にボディ下部が地面に擦ってしまうこともあります。この対策として、ラバーコーンがヘタっても車高が下がらないようにハイローキット(Hi-Low Kit)という製品が取り付けられているミニが多いですね。ゴムがヘタり、車高が下がってくると、ストラット(金属の棒)の長さを調整し、車高を元に戻すことができます。もっと乗り心地を良くしたい、という方にはラバーコーンからコイルスプリングのサスペンションへの換装をオススメしています。
金属の錆び、摩耗を防ぐグリスアップ
クラシックミニには定期的にグリスアップが必要なポイントがいくつかあります。距離や時間を重ねるとグリスが次第に切れてくるので、確実な作動や金属部品の摩耗、及び錆びが出るのを防ぐためにグリスアップするのです。車体下部の8ヶ所に設けられたニップルへ、グリスガンを使ってグリスを注入するのですが、長く良いコンディションを維持するには、車体の各可動部にもグリスアップしなければなりません。
グリスアップはオーナーさんでもできますが、それほど頻繁に行うメンテナンスではないため、グリスやグリスガンを用意しておくのは面倒でしょう。また、グリスアップ時に溢れ出したグリスは汚れの元になるので、きちんと拭き上げてください。オイル交換の際にグリスアップは簡単にできるので、こちらもお店に任せておけば問題ないでしょう。
最後に
「クラシックミニは車マニア向けの車」というイメージがありますが、もっと気軽に乗っていただける車です。整備好き、走り好き、ヴィンテージカー好きの方を飽きさせない懐の深い車でもありますが、「クラシックミニのデザインが好き」という単純な理由でも乗って楽しい車です。
しかし、クラシックミニが定期的な整備が必要な機械であることを忘れないでください。「クラシックミニは壊れやすい」と言う人もいますが、すでに壊れているミニを買ってしまった、もしくは定期的なメンテナンスを怠ってしまったが故にトラブルが発生しているのかもしれません。信頼できる専門店を見つけ、コンディションのいい車両に出会えれば誰でもクラシックミニの世界を気軽に楽しめると思います。
クラシックミニは乗りっぱなしでOKな車ではありませんが、皆さんが思うほど敷居が高い車でもありません。調子よくミニを楽しんでいくためのサポートができる専門店は全国にありますから、気軽にクラシックミニの世界に飛び込んでみてください。