ミニのガソリン車とディーゼル車をスペックで比較
現在、ディーゼルエンジンモデルをラインナップしているのはミニ3ドア(F56)、ミニ5ドア(F55)、ミニクラブマン(F54)、ミニクロスオーバー(F60)の4モデルになります。ミニコンバーチブル(F57)以外のモデルはクーパー(D)、クーパーS(D)グレードにディーゼルエンジンのラインナップがあると考えてください(ミニ3ドアのみクーパーSDの設定なし)。ヨーロッパではONEグレードにもディーゼルエンジンモデル(ONE D)の設定がありますが、日本では販売されていません。
欲しいグレードにガソリン、ディーゼルエンジンの両方が設定されていて悩む人のためにスペックやディーゼルエンジンの特徴、選ぶメリットを解説します。
ミニ3ドア(F56)のガソリン、ディーゼルモデルの主要諸元、スペック
クーパー | クーパーD | クーパーS | クーパーSD(3ドアでは新車販売終了) | |
---|---|---|---|---|
標準車両本体価格 | 323万円 | 336万円 | 390万円 | 403万円 |
車両型式 | 3BA-XR15MW | 3DA-XY15MW | 3BA-XR20MW | 3DA-XY20MW |
車両重量 | 1210kg | 1240kg | 1270kg | 1310kg |
エンジン種別 | 直列3気筒DOHCターボ | 直列3気筒DOHCターボ (ディーゼル) | 直列4気筒DOHCターボ | 直列4気筒DOHCターボ (ディーゼル) |
排気量 | 1498cc | 1496cc | 1998cc | 1995cc |
トランスミッション | 7AT | 7AT | 7AT | 8AT |
使用燃料 | ハイオク | 軽油 | ハイオク | 軽油 |
燃料タンク容量 | 40L | 44L | 44L | 44L |
最高出力 | 136ps | 116ps | 192ps | 170ps |
最大トルク | 220Nm | 270Nm | 280Nm | 360Nm |
燃費(JC08モード走行) | 17.7km/L | 23.3km/L | 16.4km/L | 21.2km/L |
ミニ3ドア、5ドアはエンジン仕様が同じのため、ミニ3ドアのクーパー(D)、クーパーS(D)をベースにガソリンエンジン、ディーゼルエンジンモデルを比較してみましょう。なお、上の表ではクーパーSDのスペックを記載していますが、現在はミニ3ドアのクーパーSDの国内新車販売は終了しています(ミニ5ドアではクーパーSDの設定あり)。
クーパー(D)、クーパーS(D)、どちらのグレードもディーゼルモデルはガソリン車+13万円の価格設定となっています。また、ディーゼルモデルの燃費はガソリン車に比べて約30%も良くなっています。最高出力はガソリン車の方が上で、最大トルクはディーゼルエンジンの方が太いのは、一般的なガソリン車とディーゼル車の特徴と同じです。
なお、最上級のスポーツグレードのJCW(ジョンクーパーワークス)にはガソリン車の設定しかありません。スポーツモデルはアクセルを踏み、回転数を上げて走行するものが好まれます。そのため、ディーゼルはスポーツ走行向きのエンジンではないのです。
ディーゼルはスポーツ走行向きのエンジンではないと書きましたが、一般道や高速道路でも法定速度+α程度の走りならディーゼルエンジンでも過不足はありません。むしろ、街中でスピードが出せない、回転数があまり上げられないシーンではディーゼルの低回転での太いトルクが役立つシーンは多いでしょう。
ミニクラブマン(F54)のガソリン、ディーゼルモデルの主要諸元、スペック
クーパー クラブマン | クーパーD クラブマン | クーパーS クラブマン | クーパーSD クラブマン | |
---|---|---|---|---|
標準車両本体価格 | 391万円 | 404万円 | 435万円(※ALL4は459万円) | 448万円 |
駆動方式 | FF | FF | FForフルタイム4WD(ALL4) | FF |
車両型式 | 3BA-LV15M | 3DA-BB20M | 3BA-LV20M | 3DA-BB20M |
車両重量 | 1430kg | 1540kg | 1470kg(※ALL4は1550kg) | 1540kg |
エンジン種別 | 直列3気筒DOHCターボ | 直列4気筒DOHCツインターボ (ディーゼル) | 直列4気筒DOHCツインターボ | 直列4気筒DOHCツインターボ (ディーゼル) |
排気量 | 1498cc | 1995cc | 1998cc | 1995cc |
トランスミッション | 7AT | 8AT | 7AT(※ALL4は8AT) | 8AT |
使用燃料 | ハイオク | 軽油 | ハイオク | 軽油 |
燃料タンク容量 | 48L | 48L | 48L | 48L |
最高出力 | 136ps | 150ps | 192ps | 190ps |
最大トルク | 220Nm | 350Nm | 280Nm | 400Nm |
燃費(JC08モード走行) | 16.7km/L | 19.7km/L | -km/L | 19.5km/L |
ミニクラブマン、ミニクロスオーバーは同じディーゼルエンジンを搭載しているため、ここではミニクラブマンのガソリン、ディーゼルエンジンのスペックのみを紹介します。ミニクラブマン、ミニクロスオーバーはクーパーDとクーパーSDの2つのディーゼルエンジンモデルがラインナップされており、同グレードでのディーゼルモデルの価格はどのモデルもガソリン車の価格+13万円となっています。
注意して欲しいのはミニ3ドア、5ドア系のディーゼルモデルと、ミニクラブマンのディーゼルではクーパーDの排気量が違い、ミッションの仕様も違うことです。詳しくは上記表をご覧ください。ミニ3ドア、5ドアのクーパーDが1.5L、ミッションが7ATなのに対して、クラブマンのクーパーDはクーパーSDと同じ2Lエンジンを採用、ミッションは8ATとなっています。また、ミニクラブマン、ミニクロスオーバーは車両重量も重いことから、ミニ3ドア、ミニ5ドアのディーゼルエンジンに比べると最高出力や最大トルクの数値が違っています。
燃費についてはミニ3ドア、5ドアのディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べて約30%燃費が良かったですが、ミニクラブマンやミニクロスオーバーではガソリン車に比べて20%弱の燃費向上となっています。
BMW、ミニに採用されているディーゼルエンジンについて
ヨーロッパではBMW、ミニの販売数の60%がディーゼル
BMWやミニに搭載されているディーゼルエンジンはBMW社による自社開発です。BMW製のディーゼルエンジンはエンジン開発などで協力関係にあるトヨタにも供給されており、トヨタのヨーロッパ向けモデルにも採用されているほどです。日本やアメリカではまだまだ一般的ではないディーゼルですが、ヨーロッパでは新車販売の60%がディーゼルエンジンで、今回ミニに導入されたディーゼルエンジンも充分な実績を持っています。
ミニのディーゼルエンジンはBMWで実績のあるエンジンを採用
ミニのディーゼルモデルは先代の第2世代ではミニクロスオーバーとミニペースマンのみでの販売で第3世代になってからいろいろなモデルにラインナップされるようになりました。しかし、ヨーロッパでは以前からディーゼルエンジンの人気が高く、第2世代ミニの頃から日本以外ではディーゼルエンジンモデルも販売されていました。
また、ミニに採用されているディーゼルエンジン(以下、ディーゼルエンジン)はBMWに採用されたエンジンがエンジンの味付けを変更してミニに採用される流れとなっていて、まったく新開発の実績のないエンジンが採用されているわけではありません。そのため、ミニのディーゼルエンジンは熟成された信頼性の高いエンジンと言っていいでしょう。
ミニのディーゼルエンジンは最新のB47(4気筒)、B37型(3気筒)
ミニのディーゼルエンジンははBMWの主力モデルである3シリーズや5シリーズX3で長年採用、マイナーチェンジが進んだB47型、B37型エンジンが選ばれています(B47型は4気筒。同系統の3気筒エンジンはB37型)。B47型は環境性能やパワーに優れ、エンジンも軽量化されています。
また、2020年頃からより環境性能、燃費にすぐれたマイナーチェンジがエンジンにも実施され、尿素SCRシステムも採用されはじめています。
ディーゼルエンジンのメリット
ディーゼルエンジンが搭載された車はミニクロスオーバーやBMW、他メーカーなどでも販売されており、一般的になってきました。しかし、これまでディーゼルに注目したことがない方もいらっしゃるでしょうから、改めてその特徴を紹介させていただきますね。
-
- 燃費が良い
- ガソリンエンジンに比べて、ディーゼルは20~30%程度燃費が優れています。
-
- 燃料が安い
- 燃費の良さに加え、ディーゼルエンジンで使用する軽油はガソリンに比べて安いのも嬉しいですね。
-
- CO2排出量が少ない
- ガソリン車に比べるとディーゼルエンジンからのCO2排出量は約半分と言われています。
-
- トルクアップによる上質な走行フィーリング
- ガソリン車に比べてトルクが太いのが特徴です。特に停車時からの加速で太いトルクが活躍します。街中での走行が中心の方から評価が高いポイントです。また、昔のディーゼルと比べると静粛性も向上しています。
ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの違い
各エンジンの仕組み
ガソリンとディーゼルエンジンの違いを理解するにはそれぞれのエンジンについても知っていただければ理解が深まるかと思います。そこで、下記に簡単にガソリンとディーゼルエンジンの燃焼の仕組みの違いまとめてみました。
ガソリンエンジンの仕組み | ディーゼルエンジンの仕組み |
---|---|
1、空気とガソリンが混ざった「混合気」がエンジンに送られる 2、エンジン内(燃焼室)で混合気が圧縮される 3、スパークプラグで混合気を点火、爆発力を発生させる 4、爆発で生まれたエネルギーをタイヤに伝え、車が動く |
1、空気がエンジンに送られる 2、エンジン内部で空気を高密度に圧縮(空気が熱を持つ) 3、熱を持った空気に燃料を噴射 4、燃料が自然発火で点火、爆発力が発生 5、爆発で生まれたエネルギーをタイヤに伝え、車が動く |
ディーゼルエンジンがガソリンエンジンと違う点は、混合気を作る過程と点火方法です。ガソリン車は混合気を発火させるのにスパークプラグを必要としますが、ディーゼル車は圧縮された混合気が自然発火するため、スパークプラグは必要ありません。
また、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンと比べて圧縮比(エンジンに取り込んだ空気をどれだけギュっと圧縮するのかを表す数値)が高いため爆発力が強く、爆発力を得るための燃料と空気の混合比率(空燃比)もガソリン車より効率的です。そのため、以前からディーゼル車はガソリン車より経済的とされてきました。
ディーゼルは維持費が安く、高寿命
ディーゼル車に使用される燃料は軽油です。日本では軽油の方がガソリンより税金が安く、リッター辺り30円以上も差があります。しかし、精製にかかるコストはガソリンよりも軽油の方が実は上だというのはご存知でしょうか。ガソリンより軽油の方が高い国も実はあります。
日本では長距離輸送に占めるトラック輸送の比率が高く、物流を促進するため、軽油のほうが安い設定になっています。しかし、ガソリンと軽油のコスト差がなかったとしても燃費が違うためディーゼル車の方が燃料費は安くつくのです。その結果、国内外でも長距離を走るトラックやバス、船舶ではディーゼルエンジンが主流となっています。
また、ディーゼルエンジンは高寿命なこともディーゼルが人気の理由です。ディーゼルエンジンはエンジン内部での爆発が強く、ガソリン車以上に頑丈なエンジンに設計されています。また、エンジン回転数を上げなくてもパワーが得られるため、高回転まで回す必要がないことや、ガソリン車でのトラブルの原因となることが多い点火系部品(スパークプラグなど)がないことがディーゼルエンジンの信頼性の高さに繋がっています。
なぜディーゼルは軽油を使わなくてはいけないの?
なぜディーゼル車には軽油でなければいけないのか、皆さんご存知でしょうか。一言で言えば、ディーゼル車は軽油を使うように設計されている、に尽きますがもう少し説明させてください。この理由はディーゼル車とガソリン車の点火方法にあります。
軽油もガソリンにも「一定温度以上になると自然に火がつく」発火点という温度があります。軽油が約250℃、ガソリンは約300℃で自然発火します。軽油とガソリンの発火点が違うため、ディーゼルエンジンにガソリンを入れてしまうと、エンジン設計時に想定していない異常燃焼が起こってしまいます。また、燃料噴射ポンプも軽油の使用を前提に開発されており、エンジントラブルが確実に発生します。燃料の入れ間違いにはくれぐれも気を付けてください。
昔のディーゼルエンジンと今のディーゼルの違いとは?
かつてディーゼルエンジンが国内から消えたのは汚れた排気ガス問題だった
昔のディーゼルエンジンが問題にされ、新車販売が無くなったのは、排気ガスに含まれるNOx(窒素酸化物)やPM2.5などで話題になっているPM(粒子状物質。PMの後につく数字で大気汚染物質の粒の大きさを表しています)、SOx(硫黄酸化物)が大気中に排出されることでした。また、燃料の不完全燃焼で発生する黒煙(炭素が主成分)も呼吸器系に害がありました。
しかし、ディーゼルエンジンはCO2排出量と燃費性能がガソリンエンジンより優れていたため、排気ガスの問題さえクリアすれば環境に優しいエンジンです。日本では一部のメーカー以外はディーゼルエンジンの改良がストップした時期がありましたが、ヨーロッパではメーカー各社によってディーゼルエンジンの改良・開発が進み、現在のディーゼルが誕生しました。
試行錯誤の末に完成した「ディーゼル」
各社の開発の取り組みにより、完成したのがディーゼルエンジンです。ディーゼルエンジンには従来のディーゼルと比べて下記のような改善点がありました。
従来のディーゼルエンジンからの改善ポイント
- 効率を高めた燃料噴射装置
- マフラー内に搭載された専用触媒とフィルター
- 燃料となる軽油の品質改善
1点目の燃料噴射装置についてですが、ディーゼルエンジンは従来のエンジンも燃焼効率は高かったのです。しかし、不完全燃焼で発生する黒煙が目立ち、これが日本でのディーゼルエンジンの印象を悪くしていました。現在ではエンジン回転数などに合わせ、コンピューター制御できめ細かに燃料噴射が制御できる装置が開発され、排気ガスのクリーン化が進みました。
しかし、燃料の燃焼効率が進んでもNOxやPMなどの環境負荷が高い物質は発生してしまいます。これを排気ガスから取り除く仕組みが専用触媒とフィルターです。ガソリン車にも排気ガスを浄化するための触媒がマフラー内部に取り付けられていますが、ディーゼルエンジンの排気ガスはガソリン車とは成分が違います。そのため、ディーゼル専用の触媒(NOx吸蔵還元触媒)や尿素SCRシステムが開発されました。その他、有害物質をキャッチするDPF(粒子状物質除去フィルター)も触媒と一緒に取り付けられています。フィルターでキャッチされた有害物質は化学変化や燃焼させることで無害な物質に変わり、大気中に排出されます。
最後が軽油の品質改善です。かつての軽油には燃焼時にSOx(硫黄酸化物)が発生する硫黄分が多く含まれていました。燃焼過程でSOxを除去するのは難しく、そのため軽油から硫黄成分をできるだけ除去することでSOx対策が取られたのです。
こうした努力の結果、ディーゼルエンジンはクリーンディーゼルと呼ばれるほど環境に優しいモノとなり、ヨーロッパだけではなく日本国内でも再び注目されるようになりました。