50年以上受け継がれてきたミニクーパー伝統のデザイン
1959年にミニが誕生し、クラシックミニからBMW MINIに代わり現在まで、ミニの伝統的なデザインは脈々と受け継がれてきました。クラシックミニからBMW MINIに変わった当初は「デザインが変わり過ぎ」や「いや、ミニらしさは受け継がれている」などさまざまな意見があったようです。初代BMW MINIが登場して以来、現在までに3世代のミニが登場しましたが、ミニを知らない人が見ると各世代の違いがわからない、それほどデザインを受け継ぐことにこだわりを持っています。
最近の車は伝統的な名前は受け継ぐものの、見た目は昔のモノとまるっきり違うことが珍しくありません。そういった車はデザインではなく走りのコンセプトを受け継いでいるはずなので、一概にそれがダメとは思いません。しかし、時代を経ても変わらないデザインの車って素敵だと思いませんか?
そこで今回は、クラシックミニを含めたミニのフロントマスクの変遷についてご紹介しましょう。クラシックミニと今の第3世代のデザインにはしっかりと受け継がれてきたモノがある、それを知り、もっとミニを好きになっていただければ幸いです。
新旧ミニクーパーの。フロントマスクの共通点
ミニクーパーに共通するクラシックなフロントグリル
まずクラシックミニとBMW MINIのフロントマスクの共通点について。メーカーに確認を取ったわけではありませんが、現行の第3世代ミニ(ミニ3ドアや5ドア)は、クラシックミニの世界でMk-Ⅱグリル(下記参照)と呼ばれていた六角形のフロントグリルをモチーフにしているように見えます。
第1、2世代までの高さの無いフロントグリルから、より主張の強いデザインに変わりました。一方の第1、2世代のフロントグリルは、クラシックミニでMk-Ⅰグリルと呼ばれている丸みを帯びたデザインをモチーフにしているように思えます。
クラシックミニオーナーの中でもMk-ⅠグリルとMk-Ⅱタイプの人気は2分しており、ヴィンテージなテイストが好きな人は美しいRのラインが特徴のMk-Ⅰグリルを好む人が多い印象です。
Mk-ⅡグリルとMk-Ⅲグリル
フレームが6角形のデザインのグリルにはMk-Ⅲと呼ばれるモノもあります。簡単に言うとグリル内を左右に走るバーが8本のモノがMk-Ⅱ、11本のモノがMk-Ⅲだと考えてください。細かく説明するとボンネットオープナーの穴があるタイプ(1992年以前)、無いタイプ(1993年以降)…などさらに説明が必要になってきます(笑)。この記事の本文ではMk-ⅡとMk-ⅢグリルをまとめてMk-Ⅱタイプと一まとめで紹介しています。
Mk-Ⅱタイプのグリルにもいくつかの種類がある
現在、日本で販売されているクラシックミニのほとんどは1990年代のローバー・ミニのインジェクションモデルです。これらに採用されているフロントグリルは、Mk-Ⅱタイプのグリルです。
ローバー・ミニをMk-Ⅰ仕様に変更するのは、ちょっとした加工が必要です(取付後に見える穴などを綺麗に埋めないのなら、Mk-Ⅰグリルを加工無しで取付可能)。手間が掛かることもあり街中で走っているクラシックミニの多くは、Mk-Ⅱタイプのまま走っています。
なお、フロントグリルにはルーバーと呼ばれる細長いバーが設けられています(家の窓や壁にも似たデザインがあり、同じ言葉が使われています)。このルーバーのデザインにもいくつか種類があり、ほとんどはツルっとした直線のデザインですが、波打つようなデザインのルーバーが採用されているフロントグリルもあります。
波打つデザインのルーバーは60年代のオースチン・セブン(初期のクラシックミニの人気モデル)に採用されていました。愛好家からは「さざ波グリル」と呼ばれています(上記写真はMk-Ⅱタイプのさざ波グリル)。
守り続けられるミニクーパーの丸いヘッドライト形状
次にミニのデザインの特徴である大きくて丸いヘッドライトについて。最近の車は流線型や吊り目のヘッドライトが主流になっており、ミニのヘッドライトのデザインはそれだけで個性になっています。
ミニクロスオーバーやミニクラブマンは丸いデザインではありませんが、それでも他メーカーのモデルのように細長い釣り目のヘッドライトは採用していません。
Rの美しいヘッドライト形状もミニがこだわり続ける個性の1つです。クラシックミニのヘッドライトと比べると、BMW MINIのヘッドライトは非常に大きく見えますが、それはボディの大きさとのバランスをとってのこと。現行のミニにクラシックミニのサイズのヘッドライトを取り付けると間違いなくバランスが崩れてしまうでしょう。
ミニクーパーのフォグランプ形状
フォグランプのデザインや配置にもこだわりがある
BMW MINIがクラシックミニのデザインをしっかりと受け継いでいると思うのが、フォグランプのデザインです。クラシックミニではこの位置にウィンカーが取り付けられているのですが、BMW MINIでは第1世代を除いて、ウィンカーはヘッドライトに内蔵されています。しかし、クラシックミニのデザインを受け継ぐため、フォグランプをあの位置に、あのデザインで配置しているのでは、と思います。
ちなみに、クラシックミニのウィンカーはボディから張り出した非常に可愛らしいレトロなデザインです(上記写真参照)。街中で見る機会があったら間近で観察してみてください。フロントグリルやヘッドライト形状につい目がいきがちですが、ウィンカーのデザインもクラシックミニのデザインを構成する重要な要素です。現代の車は衝突安全性を考慮に入れないといけないので、突起があるデザインを避けているのでしょう。
第3世代ミニ3ドアのフロントグリルデザインは2021年を境に変化している
第3世代ミニ3ドアは2018年と2021年にマイナーチェンジが実施されました。2021年のマイナーチェンジの際にフロントグリルデザインが大きく変わっています。上の写真左側が2018年のミニクーパーSで、右側が2021年のミニクーパーSになります。2021年以降のミニ3ドアはフロントグリル中央部の樹脂パーツの大きさが拡大し、グリルを囲むメッキパーツが大幅に減ったのがわかります。
上記写真は2024年に発売予定の第4世代ミニ3ドアのBEV(電気自動車)、ミニクーパーSE(J01)になります。第4世代のミニ3ドアになっても2021年以降のミニ3ドアのフロントグリルデザインの流れが踏襲されているのがわかりますね。
最後に
長く乗っても古臭さを感じない、ミニのデザイン
斬新なデザインの車が主流の中で、ミニのレトロ過ぎない、ほどほどにクラシックなデザインは高い評価を得ています。単純にクラシックなだけのデザインだったら、ここまで広くミニが支持されることは無かったはずですが、伝統のデザイン+今風のデザインのバランスが絶妙なことがミニのデザインの素晴らしさなのでしょう。
ミニ好きの皆さんのほとんどは「なぜこのデザインがいいのか」を突き詰めて考えたことはないかもしれませんが、皆さんも何となくミニのデザインの秀逸さを感じ取り、ミニを選んだのではないでしょうか。ミニのこの伝統あるデザインはこれからも多くの人に評価されていくのでしょう。
最新のトレンドのデザインを追いかける車もいいと思いますが、流行りのデザインが変わってしまうと新しいモノに乗り換えなければいけない気になってしまいます。ミニのデザインは10年経とうが20年経とうが古臭いとは感じません。実際、発売から10年以上経った第1世代、第2世代のミニを変わらず愛し続けているミニオーナーがたくさんいます。走りの面白さだけではなく。変わらないデザインを長く楽しめるのもミニの魅力の1つではないでしょうか。